【整形外科】レッグカルべペルテス病(Legg-Calve-Perthes Disease:LCPD)が疑われた犬の一例
2024/07/10
はじめに
1週間前から左後肢の跛行が見られかかりつけ病院を受診したところ、「股関節が骨折している」と言われ、セカンドオピニオンと手術相談を主訴に来院されました。
症例情報:犬、トイプードル、8か月齢、去勢雄
受診時の状態
来院時も左後肢をかばっているようが認められましたが、元気食欲などの一般状態は問題ありませんでした。
検査
一般身体検査に異常はなく、左後肢跛行の精査のために整形外科学的検査とX線検査を実施いたしました。
整形外科学的検査
【歩様】
・左後肢の負重性跛行〜挙上
(歩様検査時、左後肢を挙上している様子)
【触診】
・左後肢、臀筋群〜大腿部にかけての筋肉量の低下
・左股関節の伸展痛
X線検査
・股関節のVD像で左大腿骨頭(股関節)に亀裂
・フロッグレッグ像では左大腿骨頭(股関節)の形態不整
超音波検査(股関節)
・左股関節の関節液貯留
・左大腿骨頭表面の不整、剥離骨折疑い
診断
各種検査より、左後肢跛行の原因として、【レッグカルべペルテス病(LCPD)による病的骨折】の疑いと診断しました。
LCPDは小型犬、特にトイプードルで最も多く見られ、大腿骨頭部への血液供給がうまくいかない結果、大腿骨頭が壊死(虚血性壊死)をしてしまう病気です。壊死を起こすと様々な病的骨折を引き起こし、強い痛みを伴います。その結果、本症例のように患肢を挙上して足を着いて歩くことができなくなってしまいます。
治療
左LCPD疑いに対する救済手術として左大腿骨頭骨頸部切除術(FHNE/FHO)を実施いたしました。
(大腿骨頭の尾背側部に形態不整が認められた)
経過と結果
入院2泊3日で退院となりました。
この手術の特徴として、術後の安静は必要なく手術翌日には歩行訓練を開始しました。しっかり術後の足を使えるようになるまでは少し時間がかかりますが、どんどんお散歩に行って歩かせることが一番のリハビリになります。
考察
レッグカルべペルテス病は進行性の病気であり、症状が進行すると激しい痛みが伴います。病気の初期は画像初見に乏しく診断が困難ですが、治療が遅れると筋肉量が低下してしまい回復までの時間もかかってしまうため、早期の適切な診断と治療介入が必要だと考えます。